## 株価はフェアバリュー、市場はトランプ政策の矛盾と限界を見破った日本株は上値が重いが、下値も堅い。今週も週明けこそトランプ政権の鉄鋼アルミ関税の大幅引き上げを受けて、日経平均は一時600円安となるなど大幅安で始まったが、週末の金曜日、今日の前引けの終値は、先週末とそれほど大きく変わらない水準にある。世界に目を転じれば、米国ではナスダック総合株価指数は年初来リターンがプラスに転換、2月以来の高値水準に達した。最高値圏にあるドイツ株を筆頭に欧州株も好調である。世界全体の動きを示す株価指数では再び最高値を目指すところまで戻ってきた。その背景は、これまでこのストラテジーレポートで再三述べてきた通りである。すなわち、1)現在の業績予想、金利の水準から導かれる理論値通りの水準に市場価格があること ‐ 換言すれば現在の株価はフェアバリュー(適正価格)にあるということ、2)市場がトランプ政策の矛盾とその限界を見破ったことの2点である。これまで通り、短期的にはトランプ政権の通商政策などで相場が振らされる場面はあっても、それで下押すようなところがあればすかさず買いが入る。なぜなら、上述の通り、市場がトランプ政策の矛盾とその限界を見破ったからである。強硬的な姿勢はその後撤回され、最終的には落ち着くところに落ち着くしかないと市場は見切っているのである。これを最近の欧米市場ではTACOトレードと呼んでいる。"Trump Always Chickens Out"の頭文字で、トランプ大統領はいつも最後は尻込みし、自ら掲げた強硬的な態度を翻すという意味だ。市場がTACOに気付いたのはいつか。米国のトリプル安が起きた時である。相互関税の発表から1週後に関税は発動されたが、その4月9日の日本時間の昼に、ドル・米国債・米国株(先物)が同時に売られるトリプル安が起きた。トランプ政権が関税の90日間猶予を発表したのは、その直後だ。その後も、トランプ氏のパウエル議長解任の意向を受けて、ドル不信から市場の混乱が続くと、パウエル議長の解任を取り下げるとトランプ氏は発言した。これで市場は米国債やドルが売られたりするのをトランプ政権は看過できないということを知ったのである。トランプ氏と言えども、最後のところでは米国経済を守らなければならないというのが、白日のもとに明らかになったのである。## 市場が賭けるTACOトレードはうまくいくそしてまたTACOについての確信度を深めるニュースが入ってきた。トランプ米大統領は5日、中国の習近平国家主席と貿易問題を巡り電話協議をしたと伝わった。これに先立ち、アメリカ側は、中国がスイスでの貿易協議の後も合意したはずのレアアースの輸出を遅らせていると主張し、トランプ大統領は、先月末に「中国が合意を破った」と批判していた。一見、米国側が強気の姿勢で中国を非難しているかのようだが、実態は「レアアースがなくて困っています」という泣きを入れているのに等しい。なにしろ、中国は世界のレアアースの7割を握っている。(出所:Bloomberg) いうまでもなくレアアースは最先端の電子機器に必要な鉱物で、これがないと半導体も自動車も作れない。米国ではすでにフォード[F]が工場停止に追い込まれている。自動車だけではない。レアアースは戦闘機や原子炉制御棒、その他の安全保障上の重要技術に不可欠なのである。これを握られてはトランプ氏も中国に譲歩するしかないだろう。結局のところ、市場が賭けるTACOトレードはうまくいく。これが市場の下値不安が払しょくされている背景である。
株式市場の底値不安が払しょくされた背景 | ストラテジーレポート | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
株価はフェアバリュー、市場はトランプ政策の矛盾と限界を見破った
日本株は上値が重いが、下値も堅い。今週も週明けこそトランプ政権の鉄鋼アルミ関税の大幅引き上げを受けて、日経平均は一時600円安となるなど大幅安で始まったが、週末の金曜日、今日の前引けの終値は、先週末とそれほど大きく変わらない水準にある。
世界に目を転じれば、米国ではナスダック総合株価指数は年初来リターンがプラスに転換、2月以来の高値水準に達した。最高値圏にあるドイツ株を筆頭に欧州株も好調である。世界全体の動きを示す株価指数では再び最高値を目指すところまで戻ってきた。その背景は、これまでこのストラテジーレポートで再三述べてきた通りである。すなわち、1)現在の業績予想、金利の水準から導かれる理論値通りの水準に市場価格があること ‐ 換言すれば現在の株価はフェアバリュー(適正価格)にあるということ、2)市場がトランプ政策の矛盾とその限界を見破ったことの2点である。
これまで通り、短期的にはトランプ政権の通商政策などで相場が振らされる場面はあっても、それで下押すようなところがあればすかさず買いが入る。なぜなら、上述の通り、市場がトランプ政策の矛盾とその限界を見破ったからである。強硬的な姿勢はその後撤回され、最終的には落ち着くところに落ち着くしかないと市場は見切っているのである。これを最近の欧米市場ではTACOトレードと呼んでいる。"Trump Always Chickens Out"の頭文字で、トランプ大統領はいつも最後は尻込みし、自ら掲げた強硬的な態度を翻すという意味だ。
市場がTACOに気付いたのはいつか。米国のトリプル安が起きた時である。相互関税の発表から1週後に関税は発動されたが、その4月9日の日本時間の昼に、ドル・米国債・米国株(先物)が同時に売られるトリプル安が起きた。トランプ政権が関税の90日間猶予を発表したのは、その直後だ。その後も、トランプ氏のパウエル議長解任の意向を受けて、ドル不信から市場の混乱が続くと、パウエル議長の解任を取り下げるとトランプ氏は発言した。これで市場は米国債やドルが売られたりするのをトランプ政権は看過できないということを知ったのである。トランプ氏と言えども、最後のところでは米国経済を守らなければならないというのが、白日のもとに明らかになったのである。
市場が賭けるTACOトレードはうまくいく
そしてまたTACOについての確信度を深めるニュースが入ってきた。トランプ米大統領は5日、中国の習近平国家主席と貿易問題を巡り電話協議をしたと伝わった。
これに先立ち、アメリカ側は、中国がスイスでの貿易協議の後も合意したはずのレアアースの輸出を遅らせていると主張し、トランプ大統領は、先月末に「中国が合意を破った」と批判していた。一見、米国側が強気の姿勢で中国を非難しているかのようだが、実態は「レアアースがなくて困っています」という泣きを入れているのに等しい。なにしろ、中国は世界のレアアースの7割を握っている。
いうまでもなくレアアースは最先端の電子機器に必要な鉱物で、これがないと半導体も自動車も作れない。米国ではすでにフォード[F]が工場停止に追い込まれている。自動車だけではない。レアアースは戦闘機や原子炉制御棒、その他の安全保障上の重要技術に不可欠なのである。これを握られてはトランプ氏も中国に譲歩するしかないだろう。
結局のところ、市場が賭けるTACOトレードはうまくいく。これが市場の下値不安が払しょくされている背景である。